災害被害者が差別されるとき - 3

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『災害被害者が差別されるとき』

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私は1995年の震災に於いて「自警団」の結成が大々的に行われなかったのは、多くの好条件に支えられてのことだと考えている。むろん、私の知らないところで散発的に結成されたかもしれないが、組織的にはそのことはなかった。
「自警団」を組織しようという主張には、現場においてはつねに説得力がある。反対者は「結成しなくて万一何か(怖いこと)が起こったら知らないよ」という突き放しに対して屈服する。しかし、「自警団」の基礎は、不安と疑心暗鬼と人間性悪説とエゴイズムである。その上に立って「自警団」は被災者に対するステロタイプをつくりあげ、これに対して自らを守ろうとする。「自警団」の対象は現実ではなく想像力に支えられたものである。
周辺被災地あるいは被災地の外周では自分がかろうじて逃れた幸運を感じるけれども、それを表現することは抑えられる。そのうちにこの幸運の賜物を逃すまいという心理に変わる。せっかく残った所有物を奪われまいという気持ちが全面に出てくる。

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